中小企業診断士試験、最初の一歩になるのが1次試験です。
1次試験はその後の2次試験や中小企業診断士として活動するに至るまで、全ての基礎を作る部分になるのでとても重要な試験です。
1次ってどんな問題が出るの?
何から勉強を始めればいいの?
科目多くて大変じゃない?
こんな疑問を解決して、自信を持ってチャレンジできるように1次試験について解説します。参考にしていただけると嬉しいです。

1次試験の科目
1次試験では以下の7科目があります。マークシート形式の試験が2日間にわたって行われます。
- 企業経営理論
- 財務・会計
- 運営管理
- 経済学・経済政策
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
1日目に①~④の科目、2日目に⑤~⑦の科目が行われます。
試験時間は60分または90分で、全科目100点満点です。
試験時間90分の科目は3科目で、
- 企業経営理論
- 運営管理
- 中小企業経営・中小企業政策
試験時間60分の科目は4科目で
- 財務・会計
- 経済学・経済政策
- 経営法務
- 経営情報システム
試験1日目は合計5時間、2日目は合計3.5時間の試験になります。特に1日目は長いので体力を消耗しますね。
合格基準
1次試験の合格基準は以下のように定められています。
(1) 第1次試験の合格基準は、総点数の 60% 以上であって、かつ1科目でも満点の 40% 未満のないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。
中小企業診断協会HP:試験に関するよくある質問(FAQ)
(2) 科目合格基準は、満点の 60% を基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。
1次試験の合格基準
(1)を満たせば1次試験合格です。
全て100点満点なので、700点満点の60%、つまり合計420点が合格基準になります。これに加えて40点未満の科目がないことも必須です。
科目合格の基準
残念ながら1次試験の合格基準を満たせなくても、中小企業診断士試験には科目合格の制度もあります。それが(2)の部分です。
これはシンプルで60点以上の科目が科目合格になります。科目合格は翌年、翌々年まで持ち越せるため2~3年で合格を目指す方はこの制度を最初から視野に入れて計画を立てる人も多いです。
この科目合格は点数を満たせなかった時だけでなく、欠席科目があっても60%以上を取れた科目には適用されるので覚えておくとよいでしょう。
特定資格による科目免除
この他にも特定資格を持っていると科目免除が受けられる制度があります。科目免除の対象は以下の4科目です。
- 財務・会計
- 経済学・経済政策
- 経営法務
- 経営情報システム
公認会計士、経済学博士、弁護士など非常にハードルが高くあまり現実的ではないものも多いですが、経営情報システムは「応用情報技術者」など超難関資格ではないものでも免除対象になるので保有している人も多いのではないでしょうか?
詳しくは中小企業診断協会が他資格免除について公表しているので自分の保有資格が含まれているか確認してみてください。
中小企業診断士第1次試験他資格等保有による科目免除(PDFが開きます)
科目合格や資格によって科目免除した場合、合格基準はそれらの科目を除いた総得点で計算されます。これは免除した科目がすべて60点で計算されるようなイメージなので得意科目で点数を稼ぐということができなくなります。
確実に80点を取れる科目は免除しないほうがいい場合もあります。安定して高得点を取れるなら受験、苦手科目に時間を確保したいなら免除、というように戦略によって免除を使うか慎重に考えましょう。
科目別の重要度
企業経営理論
企業経営理論は2次試験(事例Ⅰ、Ⅱ)にも直接関わってきますし、試験合格後の実務補修でもこの科目のモデルをベースに企業を分析するので最重要科目になります!!
この科目ではその名の通り経営に関する理論やモデルを体系的に学びます。
大学で経営学部や商学部だった人は聞いたことがある内容も多く、有利になります。
経営戦略論、組織論、マーケティング論など経営における現状分析から将来の計画を立てるところまでを網羅した科目です。
社会人の方でマネジメントする立場になると研修などで勉強する機会も多いのではないでしょうか?特に組織や人事に関することは管理職の方の業務にも直結する内容が多い印象です。
財務・会計
財務・会計も2次試験(事例Ⅳ)に直結する科目であり、実務においても財務諸表の数字から現状分析や課題発見をするうえで必須の知識なので、企業経営理論と並んで最重要科目です!!
この科目では企業の財務諸表から経営課題を抽出するうえで必須の知識である会計を中心に学びます。
簿記の勉強をしたことがある人はイメージしやすいと思いますが、簿記と違って貸借対照表と損益計算書の見方を知っていれば細かい勘定科目の暗記は必要ありません。
簿記の知識があるとかなり有利になりますが、知識がなくても基本を押さえれば勉強はスムーズに進めることができると思います。(私は中小企業診断士勉強前に簿記2級に落ちていますが大丈夫でした!笑)
この科目では会計だけでなく投資の意思決定(設備投資だけでなく証券投資も)なども出てきます。この部分は理論が難しくなってきて計算も増えるのでなかなか大変です。
私は大学の専門が金融だったのでここで点数を稼いでいましたが、計算に慣れるまではかなり演習しました。大学で経営学部・商学部だった人は会計の部分が、経済学部だった人はファイナンスの部分がなじみやすくて有利になると思います。
2次試験の事例Ⅳは財務・会計の知識を応用する問題でかなりの理解度と計算力が求められるので1次の段階から最も時間をかけるべき科目と言えますね。
運営管理
運営管理も2次試験(事例Ⅱ、Ⅲ)に関連していて、特に事例Ⅲでは生産管理の知識をフルに活用します。実務においても製造業や小売り業など活用場面は多いのでこれまでの2科目に次ぐ重要科目です!
この科目では主に製造業に関連する「生産管理」と店舗の立地や流通に関連する「店舗・販売管理」について学びます。
生産管理のほうは製造業と関りが少ない人は大変だと思います。私も機械の仕組みとか種類を理解するのは大変でした。
でも今の時代は言葉と図だけで勉強する必要はないのでYouTubeで動画を見ながら勉強するとイメージしやすいです。
逆に店舗・販売管理のほうはイメージしやすいです。スーパーの陳列戦略などもあって生活に密着しているので楽しく勉強できると思います。実際にスーパーに行くと楽しく買い物しながら勉強できます。
経済学・経済政策
経済学・経済政策は2次試験には直接関わらないので重要度は低めです。1次試験で合格点を取れればある程度は知識が身についているはずなので、しっかり60点を目指す科目と考えておくといいでしょう。
この科目ではミクロ経済学とマクロ経済学の理論を中心に学びます。科目名にある経済政策はマクロ経済学の延長です。この科目は当然、経済学部出身の人はかなり有利です。
経営学部や商学部等、社会科学系の学部だと基礎を勉強したことがある人も多いと思うので比較的抵抗なく始められると思います。
逆に初めましての場合は少し計算があったり、理論が中心なので難しいと感じることもあるかもしれません。一次関数や微分の基本的な計算はできるようになっておきましょう!
また、マクロ経済学を理解することは経済環境の変化やそれが企業に与える影響を予測することに役立つのでビジネスにおける意思決定には大切な知識です。1次試験だけの科目とは言いつつも、手を抜かずに頑張りましょう。
経営法務
経営法務も2次試験には直接関わらないので重要度は低めです。1次試験でしっかり合格点の60点を目指す科目と考えておくといいでしょう。
この科目では会社法や知的財産法などビジネスに関連する法律を中心に学びます。
大学で法学部だった人だけでなく、経営系の学部で会社法を学んだことがある人や社会人として法務に携わったことがある人はなじみのある法律も多いと思います。
法律なので暗記が多いです。暗記系が苦手な人は早めに初めて時間をかけて繰り返し確認することで覚えるか直前に短期集中で覚える必要があります。
経営法務は2次試験と直接は関わらないので2次試験まで覚えていなくても大丈夫ですが、実務において法律の知識は必須ですし、最近はコンプライアンス経営が求められる中でそのような知識はさらに求められると思うので個人的には時間をかけてしっかり覚えることをおすすめします。
そんなこと言ってられない!とにかく時間がない!という人は直前1か月程度で一気に進めましょう。
経営情報システム
経営情報システムは2次試験に関係することもあります。過去問を解いてみると必要ない年の方が多い気がしましたが、経営情報システムの知識を用いて解決策を提案する必要があるものもたまにあるのでしっかりと勉強する必要があります。重要度は高めです。
この科目ではいわゆるIT系の情報技術に関連するものと企業単位で見た時の情報システムについて学びます。
前者ではハードウェア・ソフトウェアやネットワークなどを学び、後者ではシステム開発や運用といったシステム構築の基礎を学びます。
情報の名の通り、情報系の学部出身の人やプログラミング経験のある人、IT系企業にお勤めの人には得意な範囲が必ずあると思うのでかなり有利になると思います。
私は情報系の基礎知識がほとんどなく、テキストに載っているものはUSBくらいしかわからなかったのでかなり苦戦しました。専門用語がわかる人はそれだけでスムーズに勉強が進むんだろうなあと思います。
今の時代、コンサルティングにおいてIT関係の話は避けては通れないので試験でも今後経営情報システムの関連問題が増えるのではないかと勝手に思ってます。
実務においても活用の幅は広がっていくと思うので、知識を身につけておいて損はないでしょう。
中小企業経営・中小企業政策
この科目は2次試験と直接の関りはありません。重要度は低めです。
この科目では中小企業に関する事例をもとに、中小企業の経営特性を学ぶ「中小企業経営」と国や自治体の施策を学ぶ「中小企業政策」の2つに分かれています。
中小企業経営は「中小企業白書」からの出題がほとんどで、過去問演習が必ずしも有効とは言えません。中小企業白書をしっかり読み込むことで対策しましょう!
中小企業政策の方は出題される論点がある程度決まっているので、過去問で対策することはかなり有効です。出題内容の予測がある程度可能な中小企業政策で得点を稼ぐイメージで勉強すると良いでしょう。
中小企業政策の方は実務において理解しておくべき内容が多いのでしっかりと勉強すると役に立つと思います。中小企業経営の方は事例研究的な印象が強く、必須の知識ではないかなあと思います。
中小企業白書を通じて情報を得られますし他の科目をしっかり勉強していれば理解もできると思うので、中小企業や小規模企業の動向を知ったり具体的な課題解決のイメージを持ったりする目的で勉強すると良いでしょう。
おすすめテキスト・問題集
第1次試験で使えるおすすめ教材を紹介します。過去問集以外は実際に私が活用していたものです。
スピードテキスト
これは1次試験の教科書的な位置づけで、受験生の間では最も有名なものだと思います。要点がまとまっていて図表も多くわかりやすいです。
1次試験はこの本をしっかり理解すれば十分合格ラインを越えます。インプットだけで身につけるのは難しいのでアウトプットのためにおすすめしたいのがスピード問題集です。
スピード問題集
これはスピードテキストと結びついているので復習もしやすく、過去問を中心に構成されているため無駄なく知識を定着させることができます。
私はスピードテキストである程度知識をインプットしたら、ひたすらこの本でアウトプットを繰り返してました。
文字を目で追っているだけでは身につかないので効率よくアウトプットができるこの問題集はかなり重宝します。
人によってはこの本だけでは演習が不十分だと感じる科目があると思います。特に最重要科目である「財務・会計」は問題演習量が点数に直結するので、さらに補強したい人は以下の問題集も併せて使うと良いです。
第2次試験 事例IVの解き方(旧:集中特訓 財務・会計 計算問題集)
これは財務・会計の計算問題がたくさん載っていて様々な論点について演習しながら理解を深めることができます。
これを1次試験対策としてやれば合格点をはるかに超えるレベルまでいけると思いますが、この計算問題集は2次試験対策がメインです。
2次試験対策のために必ず買うべき本といっても過言ではありません。ただ、どうせやるなら1次試験対策から取り組んで財務・会計を点数稼ぎの科目にしましょう。
2次試験対策を始める時に、この計算問題集が解けるレベルが身についていることは大きなアドバンテージになります。ぜひ1次試験対策の段階から取り組むことをおすすめします。
過去問題集
過去問題集については、必要に応じて購入すればよいと思います。
というのも過去問については問題、解答が中小企業診断協会のホームページで公表されているので無料で手に入ります。ただし解説がないので、丁寧な解説が欲しい人は過去問題集を買った方が良いです。
スピード問題集などである程度知識を身につけると間違える問題も減ってくるので自分でテキストを使って丁寧に復習できる人には必ずしも必要ないかなと思います。
私は大学生の時に勉強していて、時間には余裕があったので過去問の見直しはテキストなどを見ながら自力で行っていました。
効率を高めたい人は過去問題集に掲載されている直近5年分は効率的に勉強して、さらに過去問演習したい時に中小企業診断協会のHPのものを利用すると良いでしょう。
まとめ
中小企業診断士の1次試験は2次試験だけでなく、その後の診断士活動の基礎にもなる重要な試験です。出題科目、特徴は以下の通りです。
- 企業経営理論(試験時間90分、重要度★★★)
- 財務・会計(試験時間60分、重要度★★★)
- 運営管理(試験時間90分、重要度★★)
- 経済学・経済政策(試験時間60分、重要度★)
- 経営法務(試験時間60分、重要度★)
- 経営情報システム(試験時間60分、重要度★★)
- 中小企業経営・中小企業政策(試験時間90分、重要度★)
科目ごとの重要度を考えながら戦略を立ててみてください。
実際に私が1次試験を受験した体験記も参考にしていただけると嬉しいです。