前回は中小企業診断士の試験完全合格までをお話しました。
今回は試験合格後に経験される方が多いであろう、実務補習についてのお話です。
この記事は合格体験記シリーズの一部です。他の記事もぜひ参考にしてください。
- 合格体験記① きっかけ
- 合格体験記② 1次試験
- 合格体験記③ 2次試験
- 合格体験記④ 実務補習 ←本記事
実務補習とは
実務補習は、中小企業診断士として登録する時に必要な実務経験の要件を満たすために、実際に中小企業のコンサルティングを行うものです。
試験合格者が5〜6人のチームになって、指導員の元で分析手法やコンサルティングの基礎を学びます。
資格登録に必要な実務要件については以下のように定められています。
(1) 中小企業診断士試験第一次試験および、第二次試験合格者
第二次試験合格日以降で以下1)または、2)の実務要件(15日以上)を満たすこと。
1)登録実務補習機関が行う実務補習を受講したこと
2)中小企業者に対する経営の診断助言業務または、経営の窓口相談業務に従事したこと。(2) 中小企業診断士養成課程または、登録養成課程修了者
中小企業診断士試験第一次試験に合格し、中小企業大学校の養成課程または、登録養成機関が行う登録養成課程を修了したことなお、(1)、(2)いずれの場合も省令で定める欠格要件に該当しないこと
中小企業庁:申請・届出の手引き https://www.chusho.meti.go.jp/shindanshi/shindanshitetuduki01.htm
知り合いに中小企業の社長さんがいて協力してもらえる場合は受講せずに実務従事で要件を満たす人もいます。
しかし協力を得られる知り合いの社長がいる人は多くないと思うので、この実務補習を1回以上経て登録する人が多数派でしょう。
私は5日×3回受講したので、登録に必要な計15日全てを実務補習で満たしました。
大学生としても、社会人としても受講した経験があるので、それぞれの目線で感じたことを書いていきたいと思います。
大学生で実務補習を経験
試験合格直後の冬に5日間のコース、就活が落ち着いた大学卒業直前に5日間のコースを受講しました。
大学生で受講するともれなくチームで最年少になります。
自分の次に若いメンバーが10歳年上という回もありました。それくらい大学生で実務補習を受講する人は珍しいです。
社会人経験がない分、力不足を感じる場面もありますが、社会人の先輩方から学べることがたくさんあったので誰よりも学びは多かったと思います。
また、就活中なら社会人の飾らない生の声が聞けますし、いろいろ相談もできるのでとても有意義です。
指導員の先生は基本的に独立されている方なので、先生の経験談を聞けるのも今後のキャリアを考える上で参考になります。
そして何より、実際にコンサルティングをさせていただく中小企業の社長にヒアリングに行くという経験は普通の大学生ならまずできないでしょう。
対象企業の業界について社長はプロフェッショナルなので、チームメンバーとの話し合いでは話題にならなかった業界動向や、直近の政府や自治体の政策による影響など、経営者ならではの視点からお話を伺うことができ、コンサルティングの面白さを感じます。
ヒアリングからコンサルティングの糸口を引き出す必要があるので、特に営業経験のある方がメンバーにいると、その質問力に助けられることもあり、勉強になります。
実務補習はお金がかかるので(1回5万円+交通費など)、大学生だった私は受講を少しためらいましたが、圧倒的な学びの多さを考えると本当に受講してよかったと思います。
あの体験を5万円でできるのは安いとすら感じます。
実務補習での学びはもちろんですが、就活で話すネタとしても非常に強力なので得るものはとても多かったです。
社会人で実務補習を経験
登録前、最後の実務補習(3回目)を社会人1年目で受講しました。
まだ社会人としては数ヶ月だったので、まだまだ大学生の面影が残る未熟者でしたが、大学生で受講したのと決定的に違うことがありました。
それは、仕事と実務補習の両立です。
大学生の時は時間に余裕があるので、実務補習期間中は実務補習に集中できます。しかし、社会人ではそうはいきません。
実務補習のスケジュールは基本的に以下のようになっています。(曜日は一例ですが、このパターンが多い気がします。)
日程 | 内容 |
---|---|
1日目(金) | 顔合わせ、ヒアリング(企業訪問) |
2日目(土) | 議論、方向性決め |
自習学習期間(日〜金) | 各自作業 |
3日目(土) | 議論、要点確認、各自作業 |
4日目(日) | 議論、まとめ |
5日目(月) | 報告会(企業訪問) |
コンサルティング先の企業に訪問する必要があるので、その日程(初日と最終日)のみ平日で、それ以外はできるだけ土日になるような日程です。
そして、作業全体の進捗を大きく左右するのが自主学習期間です。
この期間は、普通に本業の仕事をしつつ帰ったら実務補習の報告書作成を進めるという形になるのでかなりハードです。
大学生で受講した時にはあまり感じませんでしたが、社会人の皆さんはこれをやられていたのかと思うと脱帽でした。
ただ、私は中小企業診断士資格とは直接的には関わりがない会社に就職したので、実務補習を進めるのは仕事と切り分けて考えることができました。
コンサルティング系の会社に勤めている方だと、ずっと仕事をしている感じになってしまうかもしれませんね。
仕事との両立は大変ですが、社会人経験が少ない中での実務補習はやはり学びが多いです。
チームは年齢が分散されるようになっているのか、大抵40〜50代くらいの社会人ベテランの方がいらっしゃいます。
普通の会社だとかなり役職が高く、コミュニケーションを取るのも緊張してしまう年代かもしれませんが、実務補習だと同じ診断士の卵として活発に議論できます。
豊富な経験から学ばせていただける部分が非常に多く、そのありがたみは大学生の時よりも社会人になってからの方が感じました。
このように実務補習は学生でも社会人でも学びが非常に多い有意義な時間になること間違いなしです!
中小企業診断士登録
実務補習または実務従事を15日以上行うと、ついに中小企業診断士の登録に進むことができます。
この登録まで完了して初めて、中小企業診断士を公に名乗ることができます。
登録手続きは以下の必要書類をそろえて、送るだけです。(実務補習を想定)
送付先も宛先ラベルが用意されているので簡単に手続きできます。
- 登録申請書
- 第2次試験合格証書(原本)
- 実務補習修了証書(原本)
- 住民票の写し
詳細は中小企業庁のHPに記載されています。
申請が受理されると、その翌々月の官報に名前が載り、中小企業診断士登録証が送られてきます。登録証を見るとついに中小企業診断士になったんだな~と実感します。
最後に
今回は大学生、社会人として受講した実務補習について、感じたことを中心にお話しました。
とにかく学びが多い実務補習は中小企業診断士資格を活かすイメージが湧いてくるので非常におすすめです。
合格体験記としては今回で最後です。
これからも中小企業診断士については大学生合格者ならではの伝えられることを中心に発信していけたらと思います!
中小企業診断士の次のステップアップとして私はUSCPA(米国公認会計士)を受験しました。中小企業診断士に合格した人や勉強が終盤に差し掛かっている人は次のステップとしてぜひ参考にしてください。